白色菌糸パルプ

近年、自然に優しく、再生可能な材料を見つける動きが活発化しています。その中で、キノコが新たな資源として注目されています。キノコはキチン、β-グルカン、α-グルカン、タンパク質などの成分を主に含んでおり、それらは自然に再生することが可能な材料です。このため、キノコを基にした製品は、安価で環境への負荷が小さく、さらに自然に還元することができる優れた特性を持っています。キノコの菌糸を培養し、それを利用してパッケージ材料、防音材、布、キノコから作った革、そしてキノコ繊維のフィルムなど、様々なものが生産されています。また、キノコ本体(子実体)を機械や化学的に処理し、新たなキノコ由来の材料を得る試みもあります。

しかし、現在利用されているキノコの子実体由来の材料は、キノコの有用成分を除去し、菌糸を微細なレベルまで破壊して利用しているため、その結果、菌糸が持つ自然の機能を最大限に活用することができていません。また、これらの材料は、キノコに含まれる色素や他の物質を完全には取り除けていないため、製品が茶色やオレンジ色になってしまう課題もあります。これに対して、我々は菌糸の構造を保ったままで、キノコから白い菌糸繊維、いわゆる白色菌糸パルプを作り出す新たな手法を開発しました。

子実体は天然由来であっても栽培物であっても使用することができます。また、他の用途で栽培されたキノコの収穫残渣や使用済残渣、さらにこれらの乾燥物も、菌糸の繊維形態が保持されていれば使用可能です。特に、本技術は現行のキノコ栽培の主流である菌床栽培の収穫残渣や使用済残渣の利用が可能であり、キノコ産業の廃棄物の再利用という課題解決に寄与する可能性があります。さらに、キノコ自体が未利用資源を使用して製造したものであり、環境に優しい材料としての価値が高いです。また、製造された白色菌糸パルプは基本的に子実体成分がほぼ全て保持されていると考えられるため、例えば、白色菌糸パルプを食品に添加することで、目的とするキノコの栄養成分や機能性成分を簡単に摂取することが可能です。

また、この菌糸パルプを用いて、繊維やフィルム等の成形も可能であったことから、テキスタイルやパッケージ製品、紙製品など様々な製品へと加工成形が期待できます。本コンソーシアムでは、信州大学で開発されたこの技術をコアとし、きのこ産業で使われていないきのこの部分を有効に活用することを目指しています。